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マンションオーナーなら押さえておきたい「借地借家法」とは

預貯金の低金利が長く続くことでほとんど利子がつかないことや、老後の公的年金額への不安から、多くの人が投資や副業に大きな関心を寄せています。このような状況下でハイリスクではない投資として、あるいは将来安定した収入が得られる副業としてワンルームマンション投資への人気が高まっています。人口減が進むなかでも、特に東京圏のワンルームマンションへのニーズは大きいため、安定した家賃収入が見込めるとして注目を集めているのです。

しかし、自動車を安全に運転するには運転技術とともに「道路交通法」の知識が必要なように、マンションを所有するオーナーにも、不動産の賃貸に関して適用される法的義務を定めた「借地借家法」についての理解がある程度必要です。そこで、借地借家法のポイントや借家人(入居者)とのトラブル事例、およびマンション経営のポイントについて解説します。

1.借地借家法の趣旨とは

借地借家法とは、他人の土地を借りてその土地に自己所有の建物を建てられる権利である借地契約、および賃貸住宅などの借家契約に関する事項を定めた法律のことです。

条文には第1条に借地借家法の趣旨(目的)として、「この法律は、建物の所有を目的とする地上権及び土地の賃借権の存続期間、効力等並びに建物の賃貸借の契約の更新、効力等に関し特別の定めをするとともに、借地条件の変更等の裁判手続に関し必要な事項を定めるものとする」と書かれています。

2.借地借家法は民法の特別法にあたる

賃貸借は、住宅・マンションなどの建物、駐車場、レンタカー、DVDなどに対して日常生活で幅広く行われており、一般的な賃貸借に関する法律的な権利・義務の規定は一般法である民法に定められています。しかし、土地や建物は、人が生活や事業をするための重要な拠点・基盤として賃貸借が行われます。そこで、賃貸借における借地人・借家人の立場を民法の規定よりも積極的に保護するために、民法の特別法として借地借家法が制定されているのです。

特別法とは、一般法よりも適用対象が狭く特定されている法律のことで、特別法が優先して適用され、特別法に規定がないときは一般法が適用されます。なお、契約の当事者同士が合意すれば、法律に反する合意内容であっても有効になることがあり、このような法律の規定は「任意規定」と呼ばれます。一方、当事者同士が合意した内容であっても、法律に反する合意は無効になる規定を「強行規定」と言います。借地借家法の多くは、強行規定です。契約の当事者同士が合意しても借地借家法に反するのであれば、合意は無効となります。だからこそ、法律に関する理解と知識が必要なのです。

3.借地借家法で規定されている主な内容

借地借家法には、借地と借家に関する規定が定められていますが、ここではマンションオーナーに関係する借家に関する主な規定について紹介します。

3-1 借り主の権利「借家権」とは

借家権とは、賃貸借契約をしてマンションを借りているときに借家人に生じる権利のことです。借家権では、借家人を保護するいろいろな権利が認められており、マンションオーナーが好き勝手に賃貸契約を解除したり、家賃を一方的に値上げしたりはできません。なお、借家権には一般的な借家権と定期借家権があります。一般的な借家権とは、契約期間が満了しても自動更新される賃貸借契約で生じる権利のことです。定期借家権とは、原則として10年、あるいは20年と契約期間を定めて、自動更新を認めない賃貸借契約で生じる権利のことです。主に貸し手が、将来は自分でその建物を利用するために、自動更新される賃貸借契約をしたくない場合に利用されます。

3-2 賃貸の契約期間について

一般的な賃貸借契約では、原則として契約期間は1年以上でなければなりません。1年未満の期間を定めた場合は、期限の定めがない契約とみなされます。ただし、例外として建物が老朽化している、または法律で取り壊しが決まっているなどの事情がある場合には、1年未満であっても取り壊すまでの契約期間にできます。

3-3 賃貸契約の更新と借り主に退去してもらいたい場合

民法の規定では、契約の賃貸借期間が満了すれば契約は終了し、貸し主は借り主に対して貸したものの返却を請求できます。しかし、建物の賃貸契約では、契約期間が終了しても借り主が住み続けたいという意志を示したときは、建物からの退去請求は原則としてできません。建物の賃貸契約は自動更新が原則になっているため、オーナーが契約の更新を拒否するには、正当な事由がなければいけません。正当な事由かどうかは、規定とオーナーが建物を使用する必要性、そして建物の状態などを踏まえて、裁判所が最終的な判断を下します。正当な事由として認められない、あるいは十分ではないときは、立ち退き料が必要です。

3-4 家賃の変更について

物価の変動や、建物の劣化に対する大規模な改修を理由に、オーナーが家賃の値上げをしたい場合もあると思います。しかしこのとき、一方的に家賃の値上げは実施できません。また、値上げの代わりに退去を命じることもできません。家賃の変更には、基本的に契約の当事者同士による合意が必要です。

当事者間では合意が成立しないときは、裁判所の調停、もしくは裁判をして裁判所に家賃の妥当性を判断してもらうことが必要です。裁判所の判断が出るまでは、借り主は妥当だと考える家賃を支払えば良いとされています。もし裁判所の判断が、支払った家賃よりも高いときは、差額と1割の利息をさかのぼって支払わなければなりません。逆に支払った家賃より低いときは、オーナーがもらいすぎた金額と1割の利息を返還しなければならないです。

3-5 マンション所有者が変更になっても借家人が居住できる権利について

賃貸目的で所有しているマンションを売却したいと思ったとき、借家人が居住している場合は、売却を理由に強制的に退去を命じることはできません。また、マンションを購入して新しいオーナーになった場合も、借家人に対して前の所有者と交わした賃貸借契約だからという理由では、借家人に退去を強制できません。借家人にそのマンションに住み続けたいという意志があれば、居住できる権利があります。

4.オーナーとして知っておきたい借地借家法の義務

前述した借家人の権利「借家権」の知識以外にも、不要なトラブルを避けるためにはマンションオーナーと借家人のそれぞれが負う義務に関しても知っておくと安心です。

ここでは、マンションオーナーと借家人がそれぞれ負う、民法を含む借地借家法上の基本的な義務について説明します。賃貸借のトラブルの多くは、オーナーと借家人のどちらかが本来守らねばならない義務を果たさないことから起きています。義務違反の内容については明確に違反しているかどうかの判断が難しいことが多いため、具体的に心配な点がある場合は、大きなトラブルに発展する前に専門家に相談することをおすすめします。

4-1.マンションオーナーが負う義務

・使用収益の義務
借家人がマンションでの生活をできるよう、部屋を明け渡す義務のことです。具体的には、一定のセキュリティ対策を行い、住居部分以外の廊下や階段、ゴミ置き場、郵便ポストなどを支障なく使用できるようにする必要があります。

・修繕をする義務
借家人の部屋の使用に支障がないように、必要な修繕をする義務のことです。具体的には、壊れて使用できない部屋の鍵の取り換え、雨漏り、水道の水漏れなどはオーナーの費用負担による修繕が必要です。ただし、室内の照明器具やカーテンなどの消耗品は借家人の負担で交換すべきものなので、修繕・交換の義務はありません。修繕義務を怠って、借家人が部屋を使用できない場合には、借家人は賃貸料の不払いや損害賠償請求をできることがあります。なお、借家人が修繕を拒否することは考えにくいですが、もし拒否されてもオーナーは修繕を実行することができます。

・費用を償還する義務
借家人が必要な費用を支払って自身で部屋を修繕した場合と、その費用をオーナーに請求できる費用償還請求権と呼ばれる権利が借家人に発生します。なお、借家人が請求できる費用には、雨漏りの修理など部屋を支障なく使用するための「必要費」と、エアコンの設置がない部屋にエアコンを設置して部屋の価値を高めるための「有益費」の2種類があります。

必要費を借家人が全額支払って修繕したときは、借家人はただちにマンションオーナーに費用を請求できます。一方有益費は、けれど部屋の価値を高めるために必ずしも必要ない費用であるため、オーナーは全額を借家人に支払う義務はありません。賃貸借契約が終了したときにオーナーが、価値増加分または借家人が負担した金額のいずれかを選択して支払えば良いことになっています。

・債務を履行する義務
オーナーには、上記の使用収益義務や修繕義務、費用償還義務などがあり、これらの責任を負うことになるため債務履行義務があります。

また、賃貸借契約は有償契約であることから、オーナーには瑕疵(かし)担保責任が生じる場合も。瑕疵担保責任とは、部屋に欠陥があった場合、オーナーが借家人に対して責任を負わねばならない義務のことです。

・自力救済禁止の義務
法律で定めた裁判などの手続きをしないで、実力行使をする権利があったとしても、その権利を勝手に実現し救済することはできないという意味の法律用語です。

例えば借家人が賃貸借契約を解除されたにも関わらず、退去せずにその後も部屋を使い続けると不法占有していることになります。このような場合、強制的に追い出したり、借家人がいないときに部屋の鍵を取り換えたりして部屋を利用させないようにしても一見問題がないように思えます。

しかし、このような行為は「自力救済」に該当するため、実施すると借家人に対して不法行為が成立し、損害賠償請求をされる可能性があるのです。たとえこれらの行為を、賃貸借契約書に記載していても無効となります。

4-2.借家人が負う義務

・債務履行義務
有償契約である以上、借家人は賃貸料を支払う義務を負います。

・用法遵守義務賃貸借契約で定められた内容で、部屋を使用しなければならない義務のことです。そのため、一般的には賃借権を無断で譲渡や他人に転貸したりはできず、賃貸借契約でペットを飼うことが禁止されていれば、飼うこともできません。

・善良な管理者としての注意義務借家人は、部屋の家賃を払っていることから使用収益の権利がありますが、自分勝手に部屋を利用していい訳ではなく、社会通念上求められる使い方をしなければならない義務を負います。なお、「善良な管理者としての注意義務」は「善管注意義務」と呼ばれることもあります。

・目的物返還義務賃貸借契約が終了したとき、原則として借家人はその部屋を原状回復して返還する義務を負います。

・契約に定めた特約の履行義務
賃貸契約で別途特約を定めて合意し契約すれば、借家人は特約に従った義務を負います。例えば、敷金や更新料の支払いなどを定めていれば、契約に従った内容で料金を支払う義務を負います。ただし、借地借家法の強行規定に反する契約内容は無効です。

5.借地借家法に関連して発生したトラブル事例

ここからは、実際に借地借家法に関して裁判に発展したトラブル事例の一部を紹介します。

5-1.部屋の刺激臭で退去せざるを得なくなり損害賠償が請求された事例(横浜地裁)

新築賃貸住宅を借りた借家人が、住宅に使用されている新建材の刺激臭により化学物質過敏症を発症。退去せざるを得なくなったとして、住宅オーナーに損害賠償を請求した事例です。この判例では、オーナーに過失はなかったとして損害賠償請求は棄却されました。ただしオーナーが、刺激臭が出ることを事前に知っていながら、コストを抑えるために自ら指示して新建材を使用していることが立証されれば、オーナーには損害賠償責任があると認められる可能性があります。

5-2.約束した修繕義務をオーナーが果たさないとして契約解除他が請求された事例(東京簡裁)

賃貸借契約時にオーナーが約束した修繕義務を果たさないため、借家人が契約解除と敷金などを返還請求したのに対し、オーナーが受け取った家賃などは返還を要しない契約特約があるとして拒否した事例。裁判所は、特約条項は法律に違反するため無効であるとして借家人の請求が認められました。

5-3.賃貸契約内容との相違を理由に借家人から損害賠償が請求された事例(東京地裁)

ワンルームマンションの賃貸契約では、建物がRC造(鉄筋コンクリート造り)となっているにも関わらず、実際はS造(鉄骨造り)であったため、振動・騒音に悩まされたとして借家人が損害賠償請求をマンションオーナーにした事例。本件ではワンルームマンションで構造上の違いは比較的重要性の低い要素にすぎないとして、損害賠償請求は否認されました。ただし、振動・騒音の程度によっては否認されない可能性も考えられます。

6.トラブルを防ぐには、信頼できるパートナー会社を選ぶことが重要

ここまで読んで、借地借家法って結構面倒……と不動産投資に及び腰になってしまった方もいるかもしれません。しかし、マンション投資では、物件選びの次に重要なのが物件購入後の管理についてです。

良い物件を選んでも、経営ノウハウや借家人との円滑なコミュニケーションができないとマンション投資に成功する可能性は低くなります。専業でできればノウハウや知識を早く身に付けられる可能性がありますが、マンションには共用スペースがあったり立地が遠方であったりすることも多くあります。そんなときに頼りになるのが、管理会社です。

しっかりした賃貸管理ができる管理会社を選ぶことで、借家人を見つけて入居率を上げ、借家人とのトラブルも未然に防止し、トラブルになっても迅速な対応で解決できます。不動産投資を続ける限り長い期間パートナーとして付き合っていくことになる管理会社は、非常に重要ですので、ぜひ信頼できる管理会社を選ぶようにしましょう。

【関連記事】マンション投資のパートナーを選ぶときに覚えておきたい5つのポイント

まとめ

マンションオーナーとして知っておくと役に立つ、借地借家法について基礎的な内容やトラブルの事例を紹介しました。安定した賃貸収入を得られるオーナーになるには、物件選びと同等以上にいい管理会社を選ぶことが重要です。そのためには、物件のことだけでなく販売会社や管理会社の質も分かるセミナーへの参加がおすすめです。

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