結局、贈与税の計算ってどうすればいいの!?事例別かんたんシミュレーション
相続税の基礎控除額の引き下げにともない、「贈与」という言葉も一般に広く浸透してきています。しかし、贈与には2つの種類があるということは、まだまだ認知されていないようです。
今回は、その2種類の贈与である「暦年課税方式」と「相続時清算課税方式」について、実際の計算方法も含めてコンパクトに解説いたします。
贈与税の計算方法:暦年課税方式とは
暦年課税とは、1年間(その年の1月1日から12月31日)のうちに贈与を受けた財産の価値をもとに算出されます。「贈与」と聞くと思い浮かべる方が多いのが、この暦年課税方式ではないでしょうか。
2015年以降は、20歳以上の子や孫が直系尊属(両親、祖父母など)から贈与を受けた場合の税率が緩和されることになりました。なお、基礎控除額は110万円で、それ以上の贈与については税金がかかります。
以下、事例ごとに贈与税を計算してみましょう。
■贈与財産の総額が500万円の場合(一般税率)
「一般税率」とは、兄弟間や夫婦間の贈与、直系尊属からの贈与でも子どもが未成年の場合などに利用します。
計算式は以下のとおりです。
500万円(贈与財産)−110万円(基礎控除額)=390万円(課税価格)
390万円(課税価格)×20%(税率)-25万円(控除額)=53万円
一般税率では、500万円の贈与をうけた場合、53万円の税金が課せられます。
■贈与財産の総額が500万円の場合(特例税率)
「特例税率」とは、父母や祖父母などの直系尊属から20歳以上(贈与を受けた年の1月1日現在で20歳以上)の子や孫が贈与を受けた場合などに利用します。
計算式は以下のとおりです。
500万円(贈与財産)−110万円(基礎控除額)=390万円(課税価格)
390万円(課税価格)×15%(税率)-10万円(控除額)=48.5万円
特例税率では、500万円の贈与をうけた場合、48.5万円の税金が課せられます。
詳しい税率表や控除額などは、国税庁のタックスアンサーを参考にしてみてくださいね。
贈与税の計算方法:相続時精算課税とは
相続時精算課税とは、高齢者から若い世代への財産の移譲をスムーズにすることを目的に創設された課税制度で、非課税で2,500万円までの生前贈与が可能です。
一見すると暦年課税よりオトクに思えますが、「相続時清算」の名のとおり、相続時に贈与財産を加算して相続税額を計算するという制度ですので、注意も必要です。
2015年(平成27年)1月1日からは、受贈者の範囲に20歳以上である孫が追加され、さらに贈与者の年齢要件が65歳から60歳以上に引き下げられています。なお、非課税枠の2,500万円に達するまでは、何度でも非課税にて贈与ができるというのが特徴です。
以下、実際の事例を見てみましょう。
■相続財産が3,000万円、贈与財産が2,500万円(現金)で、法定相続人が1人の場合
相続時清算課税では、相続財産に贈与財産を加算した金額により、相続税額が計算されます。
まずは、相続税の控除額を算出しましょう。3,000万円+(600万円×法定相続人の数)なので、「3,600万円」となります。この金額を超えた分に関して相続税がかかるわけですから、
3,000万円(相続財産)+2,500万円(贈与財産)−3,600万円=1,900万円(課税価格)
1,900万円(課税価格)×15%(課税価格に対する税率)−50万円(課税価格に対する控除額)=235万円
となり、235万円の相続税が課せられることとなります。
詳しい税率表や控除額などは、国税庁のタックスアンサーを参考にしてみてくださいね。
■相続時清算課税の注意点
相続時清算課税を利用する際の注意点としては、まず暦年課税制度との併用ができません。相続時清算課税制度をひとたび選択してしまえば、暦年課税制度に変更することもできないのです。
また、上述したように、贈与された財産については「贈与時」の価格をもとに評価が決定します。そのため、価格変動が大きい有価証券などを贈与する場合、相続時には資産価値が目減りしているのにも関わらず、高い税金を負担しなければならないこともあるため、注意が必要です。
まとめ
贈与には、暦年課税と相続時清算課税という2種類の方法があり、それぞれ税金を納めるタイミングや、計算方法が異なります。生前に贈与を行う際には、「どのように」「どのくらい」贈与をするのか、しっかり考えて行うことが大切です。
暦年課税制度を利用する場合は、長期的な贈与計画が大切になるでしょう。特に、相続時清算課税制度を利用する場合は、相続時の財産価値を贈与時よりも上昇させられるような資産運用を考えるということが重要です。
では、どのような資産を贈与するのが最適なのでしょうか。もし、「相続対策のことをもっと知りたい」とお考えの方は、ぜひ下記のコラムも参考にしてみてくださいね。
▼贈与の計算方法の前に「どんな資産を贈与すべきか」も大切です。