アパート経営の確定申告で申請できる8つの必要経費について
アパート経営を行っている場合、原則として所得を確定するために、確定申告が必要となります。確定申告とは、収入から必要経費を差し引き、所得を確定させて納税を行うための制度です。つまり、経費を正確に把握しておかないと、正しい納税はできませんし、ひいては経営状態も正しく把握できなくなります。確定申告に必要な経費について確認しておきましょう。
1.アパート経営で発生する経費
アパート経営で発生する費用の多くは、経費として計上し家賃収入から差し引くことができます。確定申告では、収入から経費を差し引いた所得を申告し、その所得に対して納税を行いますが、経費にできる費用には、主に以下のようなものがあります。
減価償却費
租税公課
借入金利息(融資を利用している場合)
損害保険料
修繕費
管理費
水道光熱費
その他の諸費用
それぞれ詳しく解説いたします。
減価償却費
建物躯体や施設設備などの固定資産は、購入費用を一度に償却できず、減価償却して耐用年数まで毎年一定の金額を経費に計上します。減価償却費は、「取得価格×法定耐用年数の償却率」で求められます。
租税公課
アパートに課税される固定資産税や都市計画税、物件を取得する際に課税される登録免許税や不動産取得税、賃貸事業者に課税される事業税などはすべて経費として計上することができます。契約書類に貼付する印紙税も経費として計上できます。
借入金利息
アパートの購入時に借り入れをした場合に、その金額に対する借入金利子部分は経費として認められます。ただし、土地の借入金利子に該当する部分の利子については、土地に関する利子が不動産所得の赤字分を超過している場合、その超過分が経費として認められますが超過しない分の、土地の借入金利子に関しては経費として認められません。
損害保険料
火災保険や地震保険、施設賠償保険などの損害保険料は全額経費にできます。数年分をまとめて支払う場合は、その年に対する保険料を毎年経費として計上できます。
修繕費
アパートの内外装や共用部分、設備などの修繕を行った場合にかかった費用です。周期的に修繕が必要なものは原則修繕費として支出した年に全額経費として計上することができます。ただし、金額によりますが、資産価値を高めるリフォームや耐震補強などの工事の場合は「資本的支出」とされ、規定の年数で減価償却を行います。
管理費
アパートの賃貸管理を管理会社に委託している場合には、管理費も経費となります。
水道光熱費
アパートの共有部分で使用している電気代や水道代などが該当します。
その他の諸費用
先に挙げた以外にも、アパート経営のための参考書やセミナー費などは新聞図書費として、入居者募集にかかった費用は広告宣伝費に計上することができます。また、不動産会社やアパート経営者との情報交換のために使用した費用は接待交際費、そのために使用した交通機関料金やガソリン代は、旅費交通費として計上できます。その他、所有権移転の登記費用やローンを利用した際は金融機関の事務手数料、携帯電話やインターネット接続費などは、アパート経営に要した部分のみを経費とすることが可能です。確定申告を税理士に依頼した場合に支払った報酬は、外注費として経費計上します。
経費を計上する際には、領収書など、経費の内容を証明できる書類もあわせて保管しておきましょう。また、通信費や旅費交通費など、アパート経営で使用した部分が費用の一部分となる場合には、計算の根拠も明らかにしておくことが必要です。
このように、原則としてアパート経営に関して使った費用であれば経費とすることができます。ただし、例外として算入が認められていない費用もあるため注意しましょう。
2.アパート経営の経費に算入できない費用
アパート経営にともない発生する費用で経費として算入できない支出や、アパート経営にかかった経費と間違えやすいものには、次のようなものがあります。これらを一緒に経費算入しないように注意しましょう。なお、確定申告においても経費とすることはできません。
ローン返済の元本分
ローン返済の元本は対象となりません。アパートを購入した費用は、減価償却費として算入されているからです。
不動産所得が赤字の場合の土地部分の借入利息
不動産を取得するために借入したローンの利息部分については経費算入可能ですが、不動産所得が赤字の場合は、土地部分のローン利息については対象外となります。その分の損失はなかったものとされ、損益通算もできません。特に土地部分の価格割合が高い築古アパートの場合は注意が必要です。
住民税・所得税
アパート経営にともなう事業税や、収益用不動産にかかる固定資産税などの租税公課は経費とすることができますが、住民税や所得税は、経営者個人に対して課税されるもののため、経費には算入できません。
3.確定申告はメリットの多い青色申告で
確定申告は所得を確定させるために必要な手続きです。アパート経営にはさまざまな費用もかかりますが、給与所得などのほかの所得との損益通算によって節税できる点がメリットのひとつです。特に経営を始めたばかりの頃は経費も多くかかっていますので、確定申告によって所得税の還付が受けられる可能性が高いでしょう。
確定申告には簡易的な申告である白色申告と、正規の帳簿に基づいて行う青色申告の2つの方法があります。不動産収入がある場合の確定申告は簡易な白色でも可能ですが、青色申告を選択すると得られるメリットはさらに増えます。事業的規模に該当する場合には、特に受けられる控除額も大きくなります。白色に比べると記帳や書類保管の手間がかかりますが、できるなら青色での申告を行っておきたいものです。
なお、青色申告は事前の届け出が必要です。すでに事業を始めている場合には、前年3月15日までに届出を行えば翌年分から、事業開始年なら届け出たその年度から申告が可能となります。
青色申告のメリット(1)青色申告特別控除
青色申告を選択すれば10万円、もしくは65万円の青色申告特別控除が受けられます。不動産所得の場合に65万円控除が認められるには、アパートの場合おおむね10室以上、独立家屋なら5棟以上の事業的規模であることが条件です。ただし、アパート以外にも、駐車場収入といった不動産収入がある場合には事業と認められるケースもありますので、税理士などの専門家の意見を仰ぎましょう。
なお、税制改革により2020年分の所得から65万円控除を受けるにはe-Tax による申告(電子申告)もしくは電子帳簿保存が条件となり、これを満たさない場合には55万円控除となります。
青色申告のメリット(2)青色事業専従者給与の必要経費算入
アパート経営が上記の事業的規模に該当する場合、同一生計の親族に支払う事業専従者給与を「青色事業専従者給与」として経費算入できます。なお、適用には金額を含め事前の届け出が必要ですが、その金額の範囲内かつ適正な金額であれば、全額が経費算入可能です。白色申告でも事業専従者控除が受けられますが、金額に上限があります。
青色申告のメリット(3)純損失の繰越し控除と繰戻し
青色申告では、赤字を3年間繰り越すことや、前年が黒字で今年が赤字の場合に、すでに支払った所得税の還付を受けることができます。
4.確定申告では経費を正しく漏れなく計上しよう
アパート経営においてはさまざまな経費が発生します。利益を最大化するには、経費を正しく把握し、コントロールすることも重要です。経費の申告漏れがあると、それだけ支払う税金も増えます。確定申告にあたっては、いま一度帳簿を確認し、正しく経費が計上されているか確認しましょう。