2043年まで続く!?ついに始動したマクロ経済スライドとは
2015年から適用されたマクロ経済スライド。テレビや新聞で見聞きはするものの「イマイチなんだかわからない」「それで結局、年金額ってどうなるの?」という方も多いのではないでしょうか。
そこで今回はそんな疑問にお答えすべく「マクロ経済スライドの仕組み」「現役世代への影響」「将来の見通し」などを解説していきます。
年金目減り時代の到来!マクロ経済スライドの仕組み
そもそも年金は、物価や賃金が上昇すれば、その上昇率に合わせて増えていくものです。しかし、マクロ経済スライドが実施された場合には、年1%の調整率を差し引いた金額のみ調整が行われることになります。
■マクロ経済スライド発動の条件
マクロ経済スライド発動の条件は、物価と賃金が上昇することです。
長らく続いていた日本のデフレのおかげで、制度ができてから10年以上もマクロ経済スライドは実施されていませんでした。しかし、アベノミクス効果や消費税率引き上げなどの影響で物価と賃金が上昇したため、今回発動されることとなったわけです。
■マクロ経済スライドがもたらす現役世代への影響
これから年金をもらう予定の現役世代も、マクロ経済スライドの影響を大きく受けることになります。
厚生労働省がモデル世帯(※1)で試算した各世代の年金の所得代替率(現役世代男性の平均手取り賃金と比べた割合)によれば、昨年度から年金をもらいはじめた世代は62.7%ですが、現在40歳の方は52.3%、30歳の方は50.6%と、大幅に減少する見込みです。
さらに、30歳の方が85歳時に受け取れる年金の所得代替率はなんと40.4%。現役世代の手取りの半分以下の年金と、貯金や退職金を切り崩して月々の生活をまかなわなければいけません。
(※1)夫が平均的な会社員、妻が専業主婦の場合
■マクロ経済スライドにより実際にもらえる年金はいくらか
所得代替率がわかったところで、次は具体的にいくらもらえるのかを確認してみましょう。
昨年度から年金をもらいはじめた世代は65歳時点で月額21.8万円ですが、これが現在40歳の方になると23.9万円、30歳の人では26.3万円と試算されています。「あれ? 増えてるからいいんじゃない」と思った方、少々お待ちください。年金は現役世代の男性の平均手取り賃金と比べた割合で考えなければなりません。
つまり、現在(2014年度)の現役世代の平均手取り額は34.8万円、40歳の方が年金を支給される頃は45.8万円、そして30歳の方が支給される頃は52.0万円ですので、若い世代ほど年金の割合が低くなっています。それだけ生活水準は困窮を極めるでしょう。
■マクロ経済スライドはいつまで続くのか
この悪夢のようなマクロ経済スライドはいつまで続くのでしょうか。
なんと、厚生労働省では、2043年まで続ける必要があるとしています。ちなみに、この予測はいくつか想定されたシナリオのうち「経済成長が堅調に推移した場合」のものですから、もちろん経済が順調に推移しなかった場合には、延長される見通しです。
年金格差時代がやってくる
所得格差、貧富の拡大が問題となっていますが、これからは「年金格差」というものも、大いに社会問題化していきそうです。
現在40歳、30歳の方は、お金を「貯める」のではなく、資産として運用していくことで、年金の減少を迎え撃つ用意をしておくべきでしょう。
▼年金が昔話になるかもしれない未来に向けて